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東京高等裁判所 昭和35年(く)20号 決定 1960年2月22日

少年 A(昭一七・一・一六生)

B(昭一七・九・四生)

C(昭一八・一・二五生)

D(昭一八・一二・一九生)

E(昭一八・一〇・五生)

F(昭一九・八・二八生)

主文

本件各抗告を棄却する。

理由

各申立人の抗告理由の要旨は、

申立人甲は少年A、申立人乙は少年B、申立人丙は少年C、申立人丁は少年D、申立人甲は少年E、申立人戍は少年Fの各親権者(実父又は養父)であるところ、右各少年は昭和三四年一二月一一日東京家庭裁判所において強姦保護事件につき、Fは初等少年院その余の五名は各中等少年院送致決定を受けたのである。しかしながら右各親権者としてはいずれも右決定には不服であるから抗告する。また申立人E本人としては、自分は友達(男八名)で女子一名(Sさん)に関係したがその数日前に友達(D君)がその女の人に「やらせろ」といつたら「こんど通つたらやらせる」といつていたのであつた。そして昭和三四年九月二一日の夜は、C君がT君の自転車に女を乗せて空地に連れて行き、女は自分でパンツズボンをぬいで、D君、C君、F君、それから自分の順で関係したが、自分のやる時「あんたまでやるの」と聞くから自分は「うん」と返事をしたら女の人は承知したのであつて、みんなが関係した時も女は平気でいたのである。女は警察の調べでうそをいつていると思う。できれば私達を女の人の前で調べ直しをしてもらいたい。またどうしてH君とT君の二人だけが家に帰れたのか自分にはどうも納得できない。というのである。

よつて本件各少年保護事件記録及び各関係少年調査記録を精査してみると、申立人Eに関する原決定判示の事実は原決定に挙示された証拠を綜合すれば優に認められるところであつて、原決定に事実誤認の廉は見い出されず、同申立人のいうように、被害者S子が右少年達と合意の上情交に及んだというがごとき事実はとうてい肯認できない。また少年Hについては、原審審判廷において自分は初めから現場に行つたのではなく最後に参加したと述べ、少年Tも原審審判廷において自分は犯行に参加していなかつた、他の連中が女と関係した時には自分とHとは東十条の友達のところに行つていたと述べていて、原決定は右両名を本件犯行の共犯者から除いて判示しているのであるから、右両名について少年院送致決定をしなかつたものであつて、このことの故に少年Eに対する原決定が非難されるわけのものではない。であるから右少年の抗告は理由ないものである。また前掲各親権者申立人はいずれもその抗告申立書には原決定には別紙の理由はより不服であるから抗告するとあるが、別紙なるものは添付されず、ついに抗告の趣意を明示するところがないのでいずれも少年審判規則第四三条第二項に違反するものというべく、また各記録を精査してみても各少年に対する原決定に影響を及ぼす法令の違反又は重大な事実の誤認があり、若しくは処分が著しく不当であるとみるべき跡は発見せられないが故に、各親権者申立人の抗告もまたいずれも理由ないものである。

よつて少年法第三三条第一項に則つて本件各抗告を棄却することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長判事 尾後貫荘太郎 判事 堀真道 判事 西村康長)

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